子どもの記憶力、おそるべし!

昨日、世の中にはこういう子もいるんだなあと感動した。

それは、児童館のサークルのあと別の児童館へみんなで移ったときのこと。お昼を食べさせ、お昼寝をさせ、午後1時〜午後5時過ぎまでそこでみんなで過ごした時のことだ。

Sora君(1歳6ケ月)は、児童館に入るなり、手をぱたぱたさせ、そして「ママ」と言い「えーん」と泣き真似をしていた。最初、私やまわりのママはそれが何を意味しているのか、さっぱり分からなかった。しかし、Sora君は、何度も何度も同じ動作を繰り返しては、周りに訴えている。

どういうことなのだろうと、よく事態が飲み込めなかった私…。さすがにSora君ママはそれが何を意味しているか分かっていた。

Sora君ママによると、Sora君は児童館の上映会で見た『みにくいあひるのこ』のワンシーンを再現しているという。Sora君は「”みにくいあひるのこ”が、みすてられちゃったことの悲しみ」を訴えていたのだった。

私はびっくりした。だって、2時間も前に見たものなんだもーん。

「あひるさんが なかまたちや おかあさんから みすてられちゃったよ。 ぼく それをみて かなしかったよ えーん …」。 Sora君のこころの言葉を文字にすると、こんなところだろうか。

Sora君は、ひとしきりその切なさをママに訴え、「そうだね。あのシーンは辛かったね」と受容され、そして「でもね、Sora君、最後はこういう経緯を経てハッピーエンドだったんだよ」と説明されていた。

そうして、ひとしきりママと話したあと、ままごとや電車、車、積み木などなどのおもちゃで遊び始めるSora君…。

しかし、大好きな車や電車のおもちゃで遊んでいたり、他の子と関わりながら遊んでいても、突然、Sora君は、また同じ手振りと片言の言葉を繰り返して、あの悲しみにひたり、涙を浮かべ始めるのだった。

文章で伝えるのはとてももどかしいのだけど、時折り思い出したように、何度も何度も訴えるSora君を見ていると、Sora君にとってそのワンシーンはとても衝撃的だったのだろうなあと思った。だって、本人が「見捨てられる」と表現したいシーンでは、ホントに本人が目に涙をうかべて、シリアスでツラそうな顔をするんだもん。ほんとに、泣きそうだよ。

しかし、最初はSora君の感受性と記憶力に感心していた私も、10回目くらいになると、「また始まった…」と、うぷぷぷと笑ってしまった(笑)。約30分置きに、Sora君の切ない顔が始まり、お話が始まるので、Sora君の次の表情がわかっちゃうしさ(笑)。

ほんとはいけないことなんだけどーね。でも、私は素直にSora君に感動してしまったよ。だって、すごい感受性と記憶力! これまで、りんごちゃんが見たものを思い出して、その時の感情を訴えたことなんて無いよ…!

Sora君ママによると、大好きなミニカーのタイヤがテーブルから落ちてはずれてしまったという<1ケ月前>の事件も、大好きな電車のシールが破れたという<2週間前>の事件も、いまだに訴えては説明し、その時の感情を話すという。

す、す、すごすぎるぅー、子どもの記憶力、恐るべし! そして、それをちゃんと受容しているママもすごい! 聞けば、Sora君が訴えるのは楽しいことよりは悲しいことが多いそうだ。それだけ、繊細なんだろうなぁ〜。Sora君はたぶん来週会ったときも『みにくいあひるのこ』の悲しみを憶えているだろう。

りんごちゃんは、さっぱりしているのかな。「何かを思い出してー」という種類の感情は、あまり見たことが無い。ここに、個性の違いがはっきり見て取れる。