にんぷのアンテナ

 「ベビーカーをお持ちのお客様は気をつけてお乗せください」
 歩く歩道などで、ときどきこんな表示を見かける。
 そうか、この上でベビーカーを使う人がいるんだなあと、ベビーカーを転がす自分を想像する。
 トイレに入れば、おむつを代えるためのシートが目に入るし、スーパーに行けば
買い物かごを乗せるキャリーの子どもシートが目にとまる。
 
 人間のアンテナというものの不思議。
 それまでは、まったく気づかなかったものが視野に入るという不思議。
 お腹に赤ちゃんができてから、私のアンテナは明らかに変化している。

 「ベビー用品売り場にいる自分」にも、「ベビー用品を研究している自分」にも、妊娠7か月にしてやっと慣れてきた。

 人間は、何を始めるのにも、まず人間はその世界の言葉を知らなければならない。
 その意味で、「ベビーカー=乳母車」という程度という認識しかなかった私も、ここのところの研究で、だいぶベビーカーに詳しくなり、お店の店員さんと対等に話せるくらいの知識を身につけた。
 
 A型ベビーカーは2か月から使用可能で、B型ベビーカーは7か月から使用可能。 今の主流はAB兼用タイプで、赤ちゃんを見ながら押せる対面式と背中を見ながら押す背面式…がある、とか。
 売り場でお目当てのベビーカーを発見して、ネットで勉強した知識をもとに、店員さんの話聞きながら、ふむふむ、これが噂の…なんて考えたり。
 
 今日のお目あての一つは、アップリカのふわっとベッドだった。
 いま流行りのAB兼用ベビーカー。素敵だなあと思ったら、私が乗りたいくらいお値段も素敵だった。
 夫ちゃんが「これって、ベビーカー界のクラウンですか?」と聞いたら、「いえいえ、ベビーカー界ベンツですねー」と店員さん。
 
 「僕は維持できずに車を手放したのに、娘はベンツかい?」と、夫ちゃんはトホホな嘆きをこぼしていた。