ベビー連れで外食するということ

先日、ベビービクスのママ友たちと洋食屋さんでランチした。外まで開け放してある開放的なお店だった。母親5人、ベビーカーに乗った1歳未満のベビー5人だったにもかかわらず、お店の奥さんは好意的に席をつくってくれた。

それぞれのベビーはまだ静かに眠っていた。私たちは、今こそとばかりにおしゃべりし、メニューを見る。見上げれば、木目調の壁に「おすすめランチ ・カレーピラフ ・スタミナスパゲティ ・きのこのクリームスパゲティ ・たらこのスパゲティ」と、可愛らしい黒板がかかっていた。

私は本当はスパゲティが食べたかった。スパゲティならどれでもいいというくらい食べたかった。しかし、私は迷わずカレーピラフを選んだ。なぜなら、以前スパゲティを選んで手痛い目にあったからである。

それは、母親学級の友だち2人と会ったときだった。同じフロアにある赤ちゃんルームで授乳し、オムツを替え、さあこれで万全だ!と思ってからのことである。2人はサンドウィッチを頼み、私は海老とほうれん草のクリームスパゲティを頼んだ。しかし、ウエイトレスがお皿を運んでくると、それぞれのベビーが泣きだしたのだ。

テーブルでベビーを抱え、ゆらゆらしてなだめたり、あやしたり。入ったお店が、メニューにも離乳食が載ってるほどにママ&ベビーにやさしいレストランとはいえ、
ベビーの泣きごえがまわりに響くと、焦ってヘンな汗をかく。周りにも、ママ&ベビーは見受けられたけど、泣いていたのは私たちのテーブルだけだった。

「左手であやしながら、右手で食べる」というのは、脱臼経験のある私からすると、脱臼時の食事よりも難しい。脱臼なら食べる以外に口を動かさずに済むのだけれど、ベビーをあやすときに口を動かさないわけにはいかないからだ。ベビーを連れて食事をすると、あやすとき、そして食べるときの両方に口を使うので、口は2倍忙しくなるわけである。

そんなときに私はスパゲティを頼んだのである。当たり前だけど、私はスパゲティを食べたかったのだ。しかし、これが失敗だった。スパゲティは食べるまえにクルクルすることが必要だったのだ。サンドウィッチを頼んだママ友2人は、片手で食べながら、ベビーをあやし、しかもおしゃべりまでしている。

しかし、スパゲティを頼んだ私は、左手はベビーをあやし、右手はフォークでクルクル巻き、それを口に運ぶ。そして、2人とおしゃべり。クルクルするのに、手間のかかるので、スパゲティがうらめしくなる。私はスパゲティをおそばのようにずるずるとすするわけにもいかないし…で、やけくそな気分になった。

私のそのやけくそな気分が伝わってか、娘はどうにも泣きやまなかった。口もとに指先をもっていけば、「おっぱい」と訴えた。「荷物見ててくれる?」といって、同じフロアの授乳室に慌ててかけこむ私…。しかも、こういう時に限って授乳室が混んでいたり、娘が遊び飲みしたりして、ちっとも授乳室を出られないのである。

レストランに戻った頃には、2人はサンドウィッチを平らげ、すでにデザートも平らげ、おしゃれなママを気取って微笑んでいた。そして、私の席のまえには、冷めたスパゲティ……。授乳室にいる間、おしゃべりに加わることもできなかった私は、その日、とっても悲しく悔しい思いをしたのである。

こんなスパゲティ経験があったから、先日は迷わずピラフにした私。ご飯ものなら、冷めても平気だし、スプーンで食べるから簡単だ。しかし、ほかのママ友4人は全員スパゲティにしたのである。他の人が食べてるものに弱い私……。スパゲティいいなあ、と羨ましく思う。

ところが、案の定、テーブルに料理が運びこまれるころにはベビーが目覚め、ベビーカーのなかで暴れたり、泣き出したり…と大変な騒ぎになった。私は、娘が大人しかったため、さっさと食べ、テーブルに手を出そうとしていた1歳の男の子を抱っこしてあげることにした。

私の作戦は上手くいった。大成功!だった。あわてなかったのは私だけだった。スパゲティを食すママたちは、クルクルするのに追われ、ベビーをあやすのに追われ、果ては冷めたスパゲティを食べるはめになっており…、はたから見ているだけで大変そうだった。ベビーを連れて外食するには、やはり作戦が必要なのだ、と彼女たちを見てほくそ笑み、悟った私である。

しかし、先日、友人の個展に出かけた帰り、夫と駅の構内にあるラーメン店に入りたくなった。私としては、リベンジな気持ちだった。ベビー連れだとしても好きなものを食べていたママ友たちが羨ましく、今度は私も食べたいものを無性に食べたくなったのである。ちなみに、私はかなりのラーメン好きであることを明記しておきたい。

娘もかなり疲れただろうし、ぐっすり寝ているし、今日は大丈夫だろう。泣きそうにはないし…。そう思っていた。そして夫もそう言っていた。しかし、注文してほっと一息ついたとき、ギャン泣きが始まったのである。それも店内に響き渡るギャン泣きだ。

青ざめ、私はあわてて外に出る。急いでトイレに駆け込む。しかし、おむつをチェックしても、おっぱいをふくませても、泣きはとまらない。そして、娘と格闘すること…20分。戻ったころには、ラーメンはすっかりぶよぶよになっていた。なんて悔しいことっ!

そんな訳で、以上3度の外食経験から、私は以下の結論をえた。

1)食べたいものを食べるときは、あたたかいものをすぐに食べられない覚悟、マズくなってもいいという覚悟を決めて注文する
2)ガマンできるときは、ベビーが泣いても上品に食べられるものを注文する
3)どんなメニューを頼むにしても、食べるまでに料理が変形する覚悟をすること

参考:食べるために必要な覚悟
   ラーメン  →のびる覚悟
   パスタ   →冷める覚悟
   洋食    →冷める覚悟
   うどん、そば→冷たいものは、かわく覚悟、温かいものは、のびる覚悟
   回転寿司  →早食いの覚悟
   焼き肉   →時間がかかり過ぎるので子どもが大きくなるまで、いけない

結論としては、ベビー連れだと外食はしずらく、ハンバーガー、おにぎり、パンなどのお手軽「買い食い」メニューが注文するのに好ましいということだろう。

食べたいものをガマンして上品に外食するか、それとも料理がマズくなることを覚悟してでも食べたいものを食べるか。外食時の決断は、今後も揺れに揺れてしまいそうだ。